作家さんに会いに行ってきたよ!第9回「spoonful」

針と糸で紡ぎ出す、その人だけの宝物

自分にできることはなんだろう?その答えが「刺繍」でした。

ひと針ひと針、指してすくって©spoonful

祖母は補正屋、母はカントリードール作家、小さなころから手仕事が周りにある環境でした。本棚には手芸本がぎっしり、糸も布も何でもそろっていました。当たり前のように自分も手芸をはじめ、クラブ活動も手芸部を選び、3年生の夏休みの自由課題は、クロスステッチのキティちゃんのクッションカバー。フェルトマスコット、ミサンガ…ひと通りいろんなものを気のむくままに作っていたあの頃。

高校も被服科に通ったものの、気が付いたら長い事手仕事から離れていて…。ふと周りを見渡すと、皆がそれぞれの才能を生かして楽しんでいることにジェラシーを感じた日、負けず嫌いな精神が目を覚まします。もう一回何か作ろうかな?ハンドメイド界隈も盛り上がってる、私もしてみたい!作った、できた!うん、やっぱり、手づくりが好き!

それが刺繍アート作家「spoonful」さんの始まりの日。

きらきら煌めく

大切にしているお茶の時間、作品のアイデアもこの時間にひらめくことが多いから。ティータイムのお供、スプーンにかけて屋号は「spoonful」。この世の素敵なものや、綺麗なモノ、かわいい物をスプーンでひとすくいしたような、デザートをひとくちちょうだい的な…そんな意味がこもっています。

大事なティータイム©spoonful

音楽好きということもあり、作家「spoonful」のデビューは音楽の流れる場所でした。好きなことをやっている人たちは、好きなことをやっている人にやさしくて、作ることを後押ししてくれました。

ハコイチの時とは全然違う雰囲気©spoonful

それで次はハンドメイドイベントに出てみようとCC福岡のハンドメイドブースに出店。そこで魚と古墳のプラバン作家「キナッコ」さんを見つけ、ハンドメイド=ほんわかしてるという漠然としたイメージが覆されて衝撃をうけました。同じくガツンときた作家が「M井」さん。うん、分かる。その流れでハコイチのことも知ってくれて、ハコイチ初出展に繋がりました。

わくわくするブース

初出展では、こんなに作家同士で交流してるんだ!とか、作家本人を見てこんな人が作ってるんだ!とか感じたり。近くに「TOMAKO」さんや「clair de lune」さんが居て、お酒の話で盛り上がったり。お酒飲みながら作っていいんだなあと安心したり。両隣の作家さんが、ハコイチ情報を教えてくれたり。「あおの目青子」さんが作品を買ってくれたことを覚えているそう。ハコイチならではの雰囲気を楽しんでくれて、なじんでくれて、それから定期的に出展してくれています。嬉しいです、ありがとう。

そんなハコイチへの初出展は、2020年の11月。くちびるの刺繍が印象的ですぐに購入した記憶があります。マスクで見ることができない相手のくちびるを想像したカタチでした。「なくしたくちびるを探してね、早く見られるようになりますように」という願いがこもっていました。くちびるは男女問わず人気で、今でも作って~という声が絶えないそう。

くちびるちゃん

自分の作品が好きで、作品を作るのはもちろん、作品を日光に当てるだけのあそびをしたりと、見るのも楽しいんです。だからハコイチという発表する場があるだけでありがたいです。と言ってくれたspoonfulさん。家で出展準備をして、開始の10時までにブースを作るのも、テーブルコーディネートみたいで楽しいんだそう。

宝箱からお気に入りの指輪を選びたい

くちびるちゃんは刺繍作品だったのですが、私の中でspoonfulさんはあまり刺繍作家という印象が薄かったころに、こんなこともできるんだ!と驚いた大分での4人展のフープ作品。「じゃぽにぱいちば」さんといえば、のネコちゃんはこの時に誕生したしたんだとか。

4人それぞれの雰囲気が伝わってくる©spoonful

その驚きの勢いのままにお願いしたハコイチフライヤー用の刺繍作品。いくつか作っていただいた中で私が選んだのが「飛び出す感情線」というこちらの作品でした。ハコイチは、カタチをとどめない面白い場所。そんなハコイチのわくわくした雰囲気を素敵に表現してくれました。

飛び出す感情線©spoonful

フライヤーは22年の5月からspoonfulさんの作品を使ったデザインです。新緑の季節の5月が一番好きな季節なので嬉しかったと教えてくれました。季節感や感情などを表現するのが好きだというspoonfulさん。シリーズ作品はあるものの、同じものはないそう。なぜなら、道できれいな石を見つけたよ、そんなその人だけの感覚を大切にしたいから。そして、好きで身に着けているものが一番その人に似合ってて、かわいいから。

なんと実はあまのじゃくな一面があって、求められると作りたくないから…ってのもあるんだって!そゆとこ、好きです。

欠けたお花のパズルシリーズ

モチーフ刺繍は新しい刺繍の表現を模索するうちに生まれました。もっともっとと求める中で、フランスでの出店を決意。出店と学びと観光で3週間という長い旅程。どうだった?と聞くと、「行ってよかった!」との力強い答え。作品を見てくれた時のリアクションが日本のお客さんと一緒で、好きは万国共通だ!と分かったそう。言葉の壁はあっても、推しを前にしてこのあふれる好きを伝えたい…という思いは同じなんでしょうね。出店は4日間、10時~18時、会議机くらいのブース、通訳の子が日替わりでついてくれました。作品について理解しようと、しゃべる中で、タイトルを訳すのが一番難しかったそう。でも、一生懸命作品のことを分かろうとしてくれて、その人なりの解釈でお客さんに伝えてくれたんだとか。なので、通訳の子によって売り上げが違ったとのこと。でも総じて、お客さんのリアクションは良くて、作品についてどんな風に思っているかをはっきりと伝えてくれたそうです。力強い感情を体当たりで体感して大きな経験を経て、無事に福岡に帰ってきました。

フランスでの出店の様子

秋ごろに開催していた個展のことも聞いてみました。個展をすると、原点に返れるというspoonfulさん。作品について語ることができて、来てくれた人と意見交換ができる、自分だけの空間を作ることができるんだそう。なるほど~。イベントはどうしても売る方にベクトルが向いてしまいがちですもんね。そして縁あって、一回目、二回目ともにレコードショップでの個展開催でした。なので刺繍も針、レコードも針…、そんな針仕事(ニードルワーク)繋がりで、タトゥーフラッシュをモチーフに作品を作りました。糸だけでタトゥーのツヤや色味が表現されていて、とってもカッコいいんです。

最近のフープ作品たち©spoonful

これからのspoonfulは?という質問をぶつけてみました。まずは作品を見つめなおしたいとの答え。糸を何本どりにするか、針の太さはどうするか、長く刺繍をする中で身に着いた今の技術でやりなおしたい。今まで作った作品をリバイバルしたい!

それと、インテリアや飾りになるフープ作品を増やしていきたいそう。リビングの壁に飾ってあるだけでテンション上がる、そんな存在を作りたい。玄関とか、自分の好きな空間に飾っておきたくなるような…魅力的な作品を作りたい。

梅雨空の紫陽花

なりたいspoonfulになる活動の一環で、昨年11月の一か月をすべてかけて、30cmもの大きなフープ作品を作りました。タイトルは「コンパッション」。花束になる前の集められた花たち、よりそって相手を尊重する咲き方をしている…。今年の5月に横浜赤レンガ倉庫で展示されます。

お気に入りのフープ作品©spoonful

そうそう、長く作家活動を続けていると過去に作った作品のメンテナンスの連絡が来るそうです。作品を見ると、あの頃との作り方の違いや、ハンドメイドだからこその修理して長く使い続けられる良さ、作品を作り終えて完成ではなくお客さんと一緒に作り上げている、作品も時代を生きているんだという思いなど、いろいろこみあげてくるんだとか。だから育てたい作品を生み出せるようになりたいあとはアレルギー対応や、樹脂の糸を使ってみたりとか、たくさんやりたいことがあるとのこと。

一点ものシリーズは男の人が買うことも多いんだとか

好きをたっぷり込めた作品たちが、誰かに巡り合って欲しい。その人のタイミング、偶然の出会い、どんなきっかけでもいいから、その人だけの宝物に。そんなspoonfulさんの愛しい作品たちに、ハコイチで、個展で、どこかのイベントで、あなただけの宝物に出会ってくださいね!

Pick Up この記事で紹介した作家

spoonful

お気に入りの作品や宝物がみつかりますように♪

ハコイチHP内 作家個別ページ

Reccomend この記事を読んだ方におすすめ

作家さんに会いに行ってきたよ!第1回「つばめ屋」

作家さんに会いに行ってきたよ!第2回「sayapico」

作家さんに会いに行ってきたよ!第3回「M井」

作家さんに会いに行ってきたよ!第4回「キナッコ」

作家さんに会いに行ってきたよ!第5回「Blue Bee」

作家さんに会いに行ってきたよ!第6回「clair de lune」

作家さんに会いに行ってきたよ!第7回「maani」

作家さんに会いに行ってきたよ!第8回「mikusoundmetal」